『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』

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『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』

『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』

 著者:水流苑まち

  『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』

前回の『弟金魚とサヨナラしたら』

に続いて、水流苑まちさんの作品を紹介する第2弾。

 

関係性は日々、創られていく

人生は、短いようで長い。

だからこそ、関係性と言うのは、緩やかに変化してゆく。
今、自分の世界の周りに当たり前のように存在してくれている人達も、
ずっと続いていくわけではないのだということを、頭のどこかでは認識している。

友達は、沢山いても構わないのに、彼氏・彼女だと、「自分にとっての1人である」とか。

一回、そういった名前のつけられた関係になってしまうと、

自分自身の理想と、相手の理想とのギャップに疲れたりすることもある。
だからと言って、なんらかの関係性に名前をつけて、安心感?のようなものを感じたいこともあったりする。

『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』と言う言葉には、

形だけでなく、本質を捉えようとしていく強さを秘めつつ、
1人の人と人としての関係構築の力強さを感じる題名で、
1番最初に目に止まったタイトルでした。

自分と自分との関係、パートナーとの関係。
この話から、みなさんはどんなことを感じるのでしょう?
秋の夜長。是非、読んで見てくださいね!

 

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『形骸化した彼氏・彼女の関係にはなりたくない』のスタート部分から立ち読み

「『性愛研究書』の記事を購入して読んでくれている人はご存じだろうが、
私には現在、性愛の研究に付き合ってくれている特定のパートナーがいる。
 プライベートな内容だから相手を特定されないように今まで人数をぼかしてきたけれど、
実は、ある程度の頻度で会っている相手は一人しかいない。
彼と肌を合わせるようになってからも、何度か別の人とセックスをしたけれど、
片手で数えられる程度だし、相手もバラバラだ。
 
 今日はそのパートナーさんとの少し変わったパートナーシップの話を書きたいと思う。

 先日、パートナーさんと初めて一緒に旅行に出かけてきた。
 離れた場所に住んでいるので、待ち合わせは現地のホテルに決定。最後に会ってから約二十日ぶりの再開だった。
 その日は顔を合わせた瞬間から彼の雰囲気がいつもと違って、
仮眠を取るという彼を部屋に残してラウンジに行こうとしたら、
抱きついてきて「寂しい。ずっとこうしていたい」なんて言って駄々をこねる場面があった。
 その後、夜のお散歩デートをしていた時も、
自分から手を繋ぎにきてくれたり、
人気のない道に入った途端に抱き寄せられて唇を奪われたりした。
 セックスをした後も、
「今回はずっと会いたかった。だから、会えた時すごく嬉しかった。何だろ、これ」なんてことを口走っていて。
 嬉しくてドキドキする一方で、それまで彼の方は私に対して恋愛感情を持つことを避けているというか、
そういう恋人同士のような愛情表現をすることはなかったから、急な展開を不思議に思ってもいた。

 翌日、目的地に向かう途中で休憩のため温泉に立ち寄った。
 風呂で疲れを癒した後、貸し切り状態の休憩室に寝転がり、
それぞれ本を読んだりスマホをいじったり好きなことをしていた。
 その時だった。パートナーさんから
「他の女の人とセックスをした」という報告を受けたのは。
 ついにこの瞬間が来たか、と身構えると同時に、
想像していた以上の胸の痛みを感じて私は思わず唇を引き結んだ。

 私たちは付き合っているわけではないし、
お互いに「あなた以外の人とは男女の関係にならない」と誓っているわけでもない。
 私自身、彼とセックスをするようになってからも、
たまに他の男性と戯れることがあったし、
彼もモテる人だから、そのうち私以外の人とするかもしれない、
もしかしたら私の知らないうちにしているかもしれないとは思っていた。

 彼とのセックスが深まってきて、心と心の繋がりを強く感じるようになってからは、
むしろ「一度、他の女の人ともセックスをしてみて欲しい」とさえ考えていた。

彼がその時にどう感じるのか興味を持ったのだ。
私は過去の経験から彼とのパートナーシップに可能性を感じていたけれど、
彼の方はまだ若いこともあって比較対象がほぼ皆無だったから、
実際に他の女性と関係を築いてみて、比べてみて欲しかった。

 それが、私たちの関係を大きく進展させるきっかけになるかもしれないという予感もあった。

 逞しい腕に包まったまま、彼が着ている衣から漂ってくる大好きな匂いを鼻腔に感じていた。

初対面の時、私はこの香りにやられたのだったな、
他人の体臭にここまで執着したのは初めてだな、などという考えが頭に浮かんでいた。

 彼から話を聞かされた後、「ふぅん」と返したきり私は言葉が出なくなってしまった。
きっと今、すごく歪んだ笑みを浮かべていると思う。
それを見られたくなくて、彼から顔を背けた。

「嫉妬しちゃった?」
 自分自身で感情を把握する前にそう訊ねられる。
ああ、この人の、他人の心の動きを感じ取るセンサーは本当に感度がいいのだな。

私よりも先に私の心を言い当ててしまうなんて。
 彼の口調が、ベッドの上でささやかれる言葉のように甘く響いたせいか、
なんとか「ちょっと」という言葉を口にすることができた。
実際はちょっとどころではなかったのだけど、
ひとまずは強がって平気なふりをせずに済んだことに安堵した。

 再び黙り込んだ私を、彼が後ろから抱きしめてくれる。

布越しに彼の体温を、耳元に呼吸を感じながら、
「その人としてみて、どうだった?」と気になっていた質問を絞り出した。
聞くのはつらいけれど、やっぱり知っておきたい。

 彼の話を要約すると、その女性はすごく甘えてくる感じで、
「応えてあげなくちゃ」と頑張った結果少し疲れてしまったということだった。

私に対しては「欲しい」という気持ちになるし、
その人としたことで私にすごく会いたくなったとも言われた。

 それを聞いたら、彼がその人とセックスをしたからこその今なのだということが見えてきて、
少し心が軽くなった。

それでも胸は痛んだけれど、素直にそのことを伝えたら、
キスをしてくれたり抱きしめて頭を撫でてくれたり、
たくさん愛情表現をしてくれて、それでだいぶ安心できた。
 とある本に、嫉妬は『自分を守ってくれる人がいなくなるかもしれない』
という時に防衛本能として現れる感情だと書かれていたのだけれど、
まさにその通りで、相手の愛情さえ感じられたら、
心は複雑でも嫉妬に飲まれるようなことにはならないのだなと思った。

 その夜、宿泊先の布団の上で戯れながら、その日一日のふり返りをした。
 話の流れで「例の女の人と今後も関係を続けるの?」と質問したら、
「とりあえず様子見ですね。決断するために経験が必要なので」といった感じの答えが戻ってきた。

 正直、もう会う気はないものだと思って軽い気持ちで聞いたから、
予想外の答えに戸惑った。胸の鼓動が速くなる。
 何度も肌を重ねるうちに情が湧いて好きになったりしないのだろうか、
と、そんな考えが脳裏を過った。

 その女性は彼のことをかなり好いているらしい。
私の存在を知った上で、それでも構わないと言っていると。
その人が彼に自分だけを見て欲しいと縋る姿を想像したら、
頭の中に膜が張ったみたいに五感の感覚が鈍くなった。

そんなものに靡くような簡単な人ではないと思ってはいても、
その不安を堂々と振り払えるほど、私はまだ彼のことを深く知っているわけではない。

 そのままセックスをしようとしたけれど、それまでみたいに気持ちが入らなくて、
途中で集中できないと言って中断してもらった。

心にわだかまりを抱えたまま無理やりしても、
きっとお互い違和感を覚えるだけだろうし、それに何より、
それまでに重ねてきた時間を穢してしまいそうで嫌だった。

 集中できないのは彼の方も同じだったらしく、
「よし、ちょっと話そうか」と横になってお互いの顔が見える状態で軽く抱き寄せてくれた。

そうやって寄り添ってくれる姿が頼もしくて、やっぱり好きだなあ、
と思って、でも、今はその気持ちを認めてしまうのが怖くて必死に遮断した。

「例の女の人の存在がどうしても気になる」

「何が知りたい? ぜんぶ正直に話すよ」

 優しく問いかけてくれたけれど、知りたいことがあるというわけではなくて、
ただ、心のやり場がなくて胸が苦しいだけだった。
想いはあふれていても、上手く言葉にする自信がなくて、
首を振って「違う、そうじゃない」と弱々しく伝えることくらいしかできなかった。

 今日は無理をせずに眠ろうということになって、
お互いに寝る準備を済ませ、軽くキスをして横になった。

彼の腕枕に左頬をのせて、背中を向ける形で横向きになる。
目を瞑ってみたけれど、案の定、考え事が止まらなくなって、とてもじゃないけど眠れそうになかった。
 それならとことんこの痛みと向き合ってやろう、と覚悟を決めて目を開ける。
薄闇の中に日本人形や木彫りの置き物の輪郭が浮かび上がった。
 このまま心が戻らなかったら、彼とはもう二度とこれまでみたいに幸せなセックスはできないかもしれない。

昨夜の、お互いの輪郭が溶けてしまうような睦み合いが、突然、遠く彼方に感じられた。
 心の防御反応だろうか、妙に感情が冷めている。
 そういえば「決断するために経験が必要」というのは、
自分がいま感じている気持ちがどういう類のものなのかを見分けるために、
他の女性といろいろ経験してたしかめたい、という意味なんだろうか。

 もしそういうことなら、その感覚は理解できるし、大切なことだと思うから見守りたいと思った。

見守りたいけれど、その間、側にいるのは心を揺さぶられて苦しいから、
落ち着くまで離れた方がいいかもしれない。

 やっとの思いで出した結論に、
もう一人の私から「それって本当に本音? そんな理由で会えなくなってもいいの?」という鋭い突っ込みが入った。

最近、この子は容赦がない。上手く誤魔化したつもりでも、ぜんぶバレている。
「どうせ、そう言えば相手にプレッシャーをかけられる、なんて馬鹿なことを考えてるんでしょ」
 図星だった。
 誰かをコントロールしようとか、何かを変えようとか、
そういう別のところに目的を置いた言動は、人間関係に歪みを生じさせる。
だから、なるべく純粋な言葉を口にしていたいし、純粋な行動を取り続けたい。
そう思って、何ヶ月もかけて自分の純度を高めてきたのに、
一番大切な人に対してそんな汚い手を使おうとした自分に、ぞっとした。
 それと同時に、子どものように拗ねている自分を感じてもいた。

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作者 水流苑(つるぞの)まちさん

はじめまして。
大阪の泉州地域で作家活動をしている水流苑(つるぞの)と申します。

いろいろ吹っ切れた30歳、書く作品もどんどん暴走気味になってきています。
今後、さらにぶっ飛んだ方向に進化していく予定なので、乞うご期待!

 

 

「そとんち」で、話されていることを合法的に、外に出してみるという試み

「そとんち」は、丁寧な暮らしを体験できる おうちのそとの、もう1つのおうち。 
成長しながら、生きる味方が増えていく場所として、
地域の人のみならず、全国各地から、それこそ、老若男女が集う場所に成長してきました。

「丁寧な暮らし」の範囲は広く、時間をかけてドレッシングや
お味噌から作られる手作りの料理を囲んで食べる、「みんなの食卓」と言う機会もあれば、
日頃もやもやしている言葉を取り出して整える「言葉のおけいこ」といった講座の場合もあります。
一期一会の機会ではあるが時に、誰にも話をしたことのない、非常にセンシティブな事柄を誰かが、
話たところから、「実は私も・・・」と言う告白的な話題となることもあります。
(和気あいあいと、終わる日ももちろんあります。)
そういった「そとんち」での会話は、その空間だけのもので、守秘義務の元、大切にそれぞれの心の中に保管されています。

ただ、色んな人の機微や想いに触れる機会と言うのは、同じ空間にいた人の心にも、多くの触発を生んでいます。

今回、「そとんち」で話されていることそのものではないけれど、心の機微を外に出してみようと思います。

様々な事情から、家から出られないと言う人や、「そとんち」に足を踏み入れたことはない人も、
身近に感じてもらえるような機会を作りたいと思ったことも背景にあります。

「そとんち」のブログと言うこの空間で、作家水流苑まちさんの作品と、そこから見えた景色や想いなどを、

私(板谷)自身の言葉で紹介する取り組みをしてみようと思っているいます。

立ち読みで、一部は無料で読むことができるし、小説と言うところから、何を感じるか?と言うこと。
読んでくれた人自身が、何を思うのかを感じて欲しいと思っています。

 

 

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