「そとんち」への想い

今日は、文京区を拠点にさまざまな活動を行っているsopa理事兼事務局長・板谷氏にお話をお聞きしました。
さまざまなコミュニティづくりの基盤となっている「そとんち」への想い、起業のきっかけ、
「そとんち」はそもそも何をしている団体なのか?未来への展望などをお聞きしました。

sopa.jp理事兼事務局長・板谷

 

Q:ライター・伊東りり子

板谷:板谷友香里氏

 

Contents

きっかけは「同級生の問題解決」

 

Q:ではまず、板谷さんが、「そとんち」を始めようと思ったきっかけを教えてください。

板谷:はい。きっかけは、小学校時代の同級生が普通とは少し違う人生を歩んでいってしまったことにあります。
私は、小学校を卒業後、私立中学に入学しましたが、同級生のほとんどは、公立に進学しました。
その学校はいわゆる「荒れた中学」でヤンキーになる子が多くいました。
小学校の同級生は入学後、「1クラスの中で10人以上が不登校なのでは?」と思うほど。
親の離婚、いじめ、失恋など理由はさまざまでしたが、そうなるとどうしても将来への選択肢が減りますよね。
彼らは高校に進学しない、入学しても一年で辞めてしまう・・・。
そんな道を歩み始め20歳のころに行き着いた先は、キャバ嬢、風俗、日雇い労働、大量のニート。
一部ですが、覚せい剤で服役・・・という話も聞こえてきました。
うつ病を発した友だちは精神科の薬の副作用で体をこわしたり、幻覚が見えたり、自殺してしまったり。
私は、そんなドロップアウトしてしまった友人たちの「問題」を何とか解決したいとずっと考えていました。

 

Q:板谷さん自身の学生生活はどうだったのですか?

板谷:私の方は、進学した私立中学がみんな受験勉強に忙しく、まったく楽しくなかったんです。
そこで、気の合う高校二年の先輩と放送部の設立へ。
それが良かったんですね。放課後に年上の色んな人と話すことで、視野が広がったのです。
例えば、思春期のころは皆、人間関係の些細な揉め事で悩んだりします。
そんなことを先輩たちに相談すると「思春期あるあるだよね」と笑い飛ばしてくれる。
すると、悩んでいることがどうでもいいことに思えたり、異なる価値観にハッと気付いたり、視点が変わったりするんです。

高校生時代の写真

子どもにとって学校は世界の全てで、選択肢が少ないもの。
でも、色んな年齢層の色んな場所の人と話していると、世界が広がり気付きがある。
私の友人も、そんな「色んな人」と話せる機会があれば、世界が広がり問題も解決できたのでは?と思っていました。

Q:それが今の事業につながった?

板谷:そうです。私を奮い起こす原動力になったのは間違いありません。
そして、人の社会的孤立感を無くしたい、どんな人でも気軽に来られるカウンセリングルームのような場所を作りたい
と思いを巡らせるようになりました。それを形にしたのが「そとんち」です。

ただ、私がsopa.jpを立ち上げたころは、同級生達は皆、問題を解決し、
それぞれ家庭を持ったり、経営者になったりして幸せに生きていました。
でも、彼らが辿ってきたような道の途上にいて苦しんでいる人は、世の中に大勢いるはず。
だから、社会課題を解決したいという想いは変わりませんでした。

また、もう一つ、私のOL時代の体験も「そとんち」の源流になったと思います。

大人になり、小学校の仲間とのBBQの様子

Q:どんな体験ですか?

板谷:私は大学卒業後、ある大手金融機関に入社したのですが、
そのころ病院で発達障害(ADHD)の診断を受けました。
その影響からか、マニュアルに従う仕事では発達障害の特徴的な症状である「集中力」が発揮され、
一人で4人分くらいの量をこなせるのです。
でも、日本企業にありがちな「良きに計らえ」という曖昧な指示を受けるとまるでわからない。
私の「良きに計らえ」と世間の「良きに計らえ」に大きな乖離がある。
かなり苦しみましたね。
でも、そのうち「なぜそのように対応したのか?」、
背景を言語化するように努めると、着地点のズレの原因が互いに理解でき、トラブルが少なくなったのです。

三社祭は下町OLの休日出勤のひとつ

 

Q:それって発達障害者でなくてもありがちですよね?

板谷:そうなんです。
例えば、転職して業界が変わると慣習や常識が異なっていて、戸惑うことがあるはず。
でも、きちんと言語化して説明すればスムーズに進んでいくんですよね。
そんな時、対話のトレーニングを行っている松本真紀子氏と出会って、
「言葉をおけいこ」することの大切さを知ったのです。
それは、「そとんち」の『言葉のおけいこ』という講座開講に繋がっていきました。

家族のように居心地のよいコミュニティの場「そとんち」を立ち上げて

Q:では、同級生を救いたいという想いで立ち上げたsopa.jp及び「そとんち」の理念やビジョンを教えてください。

板谷:先ほどお話ししたように、多様な世代の人と対話できる場を作って「社会的孤立感をなくしたい」
「誰でも気軽に行けるカウンセリングルームを」という想いを胸にスタートしました。
そして、「血縁・地縁だけでなく、一人ひとりが幸せを分かちあえる場、
困っているひとも、そうでない人も、家族のように居心地のよいコミュニティの場をつくること
『家族だけじゃない 家族のようにつながりのある社会』」をビジョンに掲げました。

言わば、自分の家(うち)ではない外のお家(おうち)、だから「そとんち」と名づけたのです。

そとんちのロゴ

 

Q:最初は、どんな事業を始めたのですか?

板谷:顕在化した社会的孤立の持続的な解決を図るために、
社会的事業の開発・運営支援をしました。
子どもたちを対象に、放課後の場所となる
アフタースクール『Labo&Townまちなか学童』
『プラス・スポーツ学童クラブ』の立ち上げ・運営のサポートに携わりました。
その後、社会的事業の社会への定着化を目指し、
NPO/企業・協働支援として、県立公園の中で、
自然体験やスポーツ体験ができる『サニースクール』の開校などを手掛けてきました。
子どもたちがさまざまな年齢層、学外の人と出会い交流できる場です。
保育士の資格を取り、
子ども達が自分の想いを表現出来る機会を作る講座やカリキュラムにも携わっています。
また、リユースと教育がつながる新しい社会貢献のカタチとして、
リユースforきっずなどの事業も展開しています。

そして2年前、トヨタ財団の国内助成金が採択されてから、
sopa.jpはますます進化を遂げてきたと思います。

 

Q:具体的には?

板谷:最近では大人を対象とした、想いを言葉にすること、言葉のおけいこを行うことで、
参加者が自身の想いを表現できるようになり、
成長・変化を得られる場づくり、講座の開講などに力を入れるようになりました。
言語化するコンテンツづくりですね。

言葉のおけいこの講座風景

 

そこでさまざまなプロジェクトが生まれました。
『地域の人を巻きこむワークショップ形式DIT』や
『みんなの学校』『お悩みカフェ』『みんなの食卓』
『コミュニティに関するさまざまな講座』『ダハハ会』『起業に関する講座』などです。

 

Q:そんなにたくさん?素晴らしいですね。それぞれ、どんな活動をしているのか概要を教えてください。

板谷:はい。DITは 、Do It Togetherの略なのですが、
「そとんち」の活動拠点となるマンションの一室をDITによりリノベーションしていくワークショップです。
外から来た人、皆が安心してくつろげる空間に変えていくプロセスを、
リノベーションを学びながら体感していただきました。

DIT合間のランチ。近所の米粉カフェの方がデリバリーしてくださいました!

DITで出会った仲間達が今は各地で拠点を持ち、応援し合っています

『みんなの学校』は10代の現役学生から80代の方まで、
興味のあることを学び合う場です。
さまざまな出会い・学びを通して、自分の世界やつながりを広げていく時間を作っています。

ウズベキスタンからの留学生の方が料理を作ってくださいました

『お悩みカフェ』は、発達障がいや不登校の当事者や家族に参加いただく
『発達障がいを個性として生きていく
ー親や教師、その子の成長を願っている人が子どもの成長や前進を止めないために』
『選択的不登校に関する講座』などを開催しています。

『発達障がいを個性として生きていくー親や教師、その子の成長を願っている人が子どもの成長や前進を止めないために』の様子

『みんなの夕食会』では、
「そとんち」事務局がスープ等のみを用意して、
メインの食事は参加者が各自持ち寄る形で、
晩ご飯を一緒に食べる食事会を定期的に実施しています。

夕食をそとんちで作ってみんなで食べることも!

『ダハハ会』は、「ダハハと笑って、現状打破」というテーマを掲げています。
日本社会では、周囲から同調を求められることが多く、
本音ではモヤモヤや違和感が生まれているのにどう対応したら良いのか分からないことが多々ありますよね。
そこで、参加者にモヤモヤや違和感について言葉にしてもらいながら、
自分が大切にしている価値観に気づける場を提供しています。

ダハハ会の様子

『コミュニティに関するさまざまな講座』では、
互いを尊重し合える素地を育み、
安心・安全なコミュニティ作りの基盤になる
『自分の世界を発現する』   『対話の力を身に付ける』の講座を開催しています。
『ことばのおけいこ』もその一つです。

『自分の軸世界を発現する』の講座の様子

『起業に関する講座』では、
想いを持った人が自ら仕事を創っていくために起業に関する講座を開催しています。

 

問題解決にフォーカスしないことが、解決以上の成果を生み出した

Q:さまざまなプロジェクトを通して、発見や気付きがあったら教えてください。

板谷:当初の想いであった「人の問題、社会課題を解決したい」を根底に、
さまざまな活動を重ねる中で、悩んでいる人に向けた講座を実施すると、
写真NGの人が増えたり、「家族に参加することを話しにくい」という声が上がったり、
「自分では問題と認めたくない」「苦労や孤立感を感じていない」という人たちに避けられるという弊害が生まれました。
すると、情報発信や口コミが妨げられ広がっていかないのです。
クローズな場になってしまう。
そこで、sopa.jpが事業の継続性とオープン性を担保していくためにも、
問題にフォーカスし解決するというのではなく、
「家族のような日常」を営める「おうちのそとの、もう1つのおうち」というコンセプトにシフトしました。
その方が、潜在的なニーズを掘り起こせるのでは?と考えたのです。
「社会課題解決」というゴールは変わらないですが、入り口を変えたわけです。
それは、「そとんち」に多様な年齢層の人たちが集まって、
ただ、対話を重ねたり、食事をしたり、料理を作ったり、学んだりする、
まるで家族との日常のように普段の時間を過ごすこと
です。
結果、化学反応が続々生まれました。

ロシア料理をみんなで作って食べています

 

Q:どんな化学反応ですか?

板谷:例えば、予備校講師の方が「そとんち」の『みんなの学校』で教える講師側へ。
幅広い世代、基礎知識の参加者を前に、大学受験を突破する学びというよりも、
先生個人の挑戦し続ける場面、背景としての想いを生徒に見せるようになり、
参加者側も触発、挑戦心が育まれていきました。
そして彼は最後に、さらに社会と深く関わろうとビジネスの世界に飛びこんだのです。
講師、参加者、共に人生を大きく変えた一例です。

科目の範囲を超えた授業

Q:問題解決につながった事例はありますか?

板谷:部活でのトラブルから学校に行けなくなってしまった高校生が講座に参加し、
さまざまな大人の声を聞いて、彼らも迷い悩みながら生きていることに気付いたと話していました。
そして、なんと学校に行けるようになり、1年後、ご家族の方から、感謝の言葉をいただけたのです。
誰かが「学校に行け」と一度でも説得したわけでもないのに。感動しましたね。

 

Q:問題にフォーカスしたわけではないが、問題が解決したいい事例ですね?

  対話の中で生まれたミラクルというべきでしょうか?

板谷:そうなんです。『発達障がいを個性として生きていくー』の講座でも近しいことがありました。
「発達障がい」の当事者、その家族、職場の人たちに参加していただくと、
当初は「これまで希望が見えない状態だった」と話していました。
そして私たちも含め、「発達障がい=問題である」「困っている」と認識していましたが、
講座を重ねるうちに「発達障がいであるからといって、困ることはあるが、不幸ではない、問題ではないのではないか?」
という認識にシフトしていきました。
すると参加者に、さまざまな可能性の気づきがあったり、
社会、職場への関わり方がポジティブになったなど、良い変化をもたらしたのです。
その後、発達障害の人が多く参加されるようになりました。
さらに、「会社等で失敗しても、発達障がいの人が集うコミュニティがあれば、
お互い話して笑って、翌日も前向きになれる」
という考えが生まれ、
発達障がいBAR」を創ろうと立ち上がる人まで出てきました。
高田馬場に開店し、そこで「ダハハ会」を開催したり、と連日、大入り満員の日々が続いています。

カントの哲学とADHDを題材とした会

不登校も同様で「学校に行かないから不幸である」という認識はどうなんだろう?
という問いが生まれ、あえて不登校を選択している中学生とその親にゲストで来てもらい、
「選択的不登校」に関する講座イベントなども開催するに至りました。
あえて学校に行かないことを選択して幸せに生きている人のいい事例を紹介することができました。

「お悩みカフェ」(不登校の親子をゲストに招いての会の様子)

 

Q:「そとんち」の活動は、さまざまな人、場所にプラスに波及していっているのですね。

板谷:広がっているのは、問題が顕在化している人だけではなく、
ごく普通に暮らしている人にもあったようです。
『みんなの夕食会』は、家庭の味として晩ご飯を皆で食べる時間です。
先日は、ワイワイ皆で餃子を作りました。
すると、単身者から顔が見える知り合いの手料理を久しぶりに食べた、
田舎に来たみたい、といった声が上がり印象的でしたね。
子ども食堂ではないですが、家族ではない大人や子どもたちが家族のように集まり、
実家に帰ったときのように寛げ、共に食事を作り味わえる場所っていいなと思うんですよね。

みんなで夕食会

みんなの夕食会の様子

 

Q:では、多くのプロジェクトに取り組みながら進化を遂げている今、
    それらを生み出す源となる現在の「そとんち」の在り方、活動の目的を改めて教えていただけますか?

板谷:世の中には、大なり小なりさまざまな「問題」と思われる何かを抱えている人が大勢います。
「問題」なのに「問題」と思いたくない、「問題」だと感じていない人さえもいます。
「そとんち」は、さまざまなプロジェクトを通して、
そんな社会課題を多くの人に認識してもらいながら、行政と提携し解決に向けた活動を行っています。
ただ、問題に真っ向から取り組むとクローズな場となり広がっていきませんでした。
そこで問題にフォーカスすることをやめ、
「家族のような日常」を営める「おうちのそとの、もう1つのおうち」
というコンセプトにシフトすることで、
結果的に問題解決、変化を生み出せるようになり、
さらに多くの人にプラスに波及していくようになりました。
「おうちのそとの、もう1つのおうち=そとんち」とは、
家族ではないけれど家族のような日常を過ごせる場。
一人ひとりの生き方や価値観に寄り添いその是非を問わない、
想いを言語化してもらう、多様な人たちと対話し尊重し合える、安心・安全なコミュニティ
です。

これまで「そとんち」のプロジェクトに参加された大勢の方が自信を深め、
自身で変化を起こし、挑戦し、新しい人生を踏み出しています。
また、問題を乗り越えた人が「幸せになれる方法」を提供できるようになったりと、
プラスのサイクルも生まれているのです。

 

誰もが自由で幸せに生きていける場を全国に

Q:では、最後に今後の目標、ビジョンがあったらお聞かせください。

板谷:今後は、持続可能な事業の仕組みを整えていきたいですね。
そして、質の高いサービスを設計・構築し提供することで、
自分のやりたいことをやりながら自身の価値を高め、
それぞれが幸せに生きていける場と、それらを全国に拡げていける仕組み
をつくりあげていきたいですね。

ポイントは、他人・社会の常識に縛られず、個の「私」が自分らしく生きていける仕組みです。
もちろん、きちんと収益を得られることも前提です。
そうすれば、男女問わず、夫婦、パートナー、家族、会社に依存せずに自由に生きられると思うのです。

私はその実験台になるつもり。
私も、sopa.jpを実質一人で運営できるようになり、
自身の収入も確保して、真の意味で自立していきたいですね。

 

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「そとんち」へ対する想い